虐待防止と身体拘束廃止に関する指針

1. 虐待防止に関する考え方

当法人(特定非営利活動法人さわやか防府)は、高齢者の権利利益の擁護に資することを目的に、高齢者虐待の防止とともに高齢者虐待の早期発見、早期対応に努め、高齢者虐待に該当する次の行為のいずれも行いません。

(ア) 身体的虐待 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

(イ) 介護・世話の放棄・放任 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置その 他

の高齢者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。

(ウ) 心理的虐待 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著し

い心理的外傷を与える言動を行うこと。

(エ) 性的虐待 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさ せ

ること。

(オ) 経済的虐待 高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の

利益を得ること。

2. 身体拘束の廃止について

身体拘束は、身体的虐待にあたり、利用者の自由を制限し尊厳を阻むものです。当法人では、利用者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく職員一人ひとりが身体的・精神的弊害を理解し、拘束廃止に向けた意識をもち、身体拘束をしないケアの実施に努めます。

1)身体拘束廃止の基準

サービス提供にあたっては、当該利用者等の生命又は身体を保護するため、緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束その他の利用者の行動を制限する行為を禁止します。

2)緊急・やむを得ない場合の三原則

身体拘束を行う場合には、次の三つの要件を満たすことが必要です。

① 切迫性

利用者本人又は他の利用者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高い事。

② 非代替性

身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替えする介護方法がない事。

③ 一時性

身体拘束その他の行動制限が一時的なものである事。

3. 身体拘束廃止に向けての基本方針

1)身体拘束の原則禁止

当法人においては、原則として身体拘束及びその他の行動制限を禁止します。

《介護保険指定基準において身体拘束禁止の対象となる具体的な行為》

① 徘徊しないように、車椅子やベッドに体幹や四肢を紐等で縛る。

② 転落しないように、ベッドに体幹や四肢を紐等で縛る。

③ 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。

④ 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢を紐等で縛る。

⑤ 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚を掻きむしらないように手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。

⑥ 車椅子・イスからずり落ちたり、立ちあがったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車椅子テーブルにつける。

⑦ 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。

⑧ 脱衣やおむつ外しを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。

⑨ 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢を紐等で縛る。

⑩ 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。

⑪ 自分の意思で開けることの出来ない居室等に隔離する。

2) やむを得ず身体拘束を行う場合

本人又は他の利用者の生命又は身体を保護するための措置として緊急やむを得ず身体拘

束を行う場合は身体拘束廃止委員会を中心に十分に検討を行い、身体拘束による心身の損害

よりも、拘束をしないリスクの方が高い場合で、切迫性・非代替性・一時性の3 要件のすべ

てを満たした場合のみ、本人・家族への説明・同意を得て行います。

3) 日常的ケアにおける留意事項

① 利用者主体の行動・尊厳ある生活に努めます。

② 言葉や対応等で、利用者の精神的な自由を妨げないように努めます。

③ 利用者の思いを汲み取り、利用者の意向に沿ったサービスを提供し、他職種協同で個々に応じた丁寧な対応をします。

④ 利用者の安全を確保する観点から、利用者の自由(身体的・精神的)を安易に妨げるような行為は行わない。 万が一やむを得ず安全確保を優先する場合は、身体拘束廃止委員会において検討します。

⑤ 「やむを得ない」と拘束に準ずる行為を行っていないか、常に振り返りながら利用者に主体的な生活をしていただけるように努めます。

4. 虐待防止・身体拘束廃止に向けた体制

1) 虐待防止・身体拘束止廃止委員会の設置

当法人では、虐待防止・ 身体拘束廃止に向けて虐待防止・身体拘束廃止委員会を設置しま

す。

(1) 設置目的

① 施設内での虐待防止・身体拘束の廃止に向けての現状把握及び改善についての検討

② 身体拘束を実施せざるを得ない場合の検討及び手続き

③ 身体拘束を実施した場合の解除の検討

④ 虐待防止・身体拘束廃止に関する職員全体への指導 ・高齢者虐待・身体拘束に関するマニュアルの作成・見直し

⑤ 身体拘束、虐待ゼロを目指して、利用者に身体拘束をすることがないよう、安全な環境を目指して職員教育や訓練、施設の整備等の実施

(2) 委員会の構成員

法人職員すべてが構成員です。

(3) 委員会の開催

毎月の定例会議の議題として、状況確認、報告、検討を行う。必要時は随時開催をする。

2) 委員会における役割

① 施設長(事業部管理者)

虐待・身体拘束における諸課題の最高責任者

② 管理者、副管理者

✓ 虐待防止・身体拘束廃止に向けての職員教育

✓ 医療機関・家族との連絡調整

✓ 家族の意向に添ったケアの確立

✓ チームケアの確立

✓ 記録の整備

③ 介護職員

✓ 虐待、拘束がもたらす弊害を正確に認識する

✓ 利用者の尊厳を理解する

✓ 利用者の疾病、障害等による行動特徴の理解

✓ 利用者個々の心身の状態を把握し基本的ケアに努める

✓ 利用者とのコミュニケーションを充分にとる

✓ 記録は正確にかつ丁寧に記録する

④ 看護職員

✓ 医師と連携し、医療的な危険性を確認し、介護職員に伝える

✓ 施設における医療行為の範囲の確認

✓ 利用者の状態観察

✓ 記録の整備

5. 虐待発見時の報告、対応に関する基本方針

虐待を発見した場合は、速やかに上位者に報告します。

また管理的立場の者には、虐待の未然防止、早期発見に努めるとともに職員から虐待の報告を受けた場合は、市への報告義務を負います。

6. 身体拘束発生時の報告・対応に関する基本方針

本人又は他の利用者の生命又は身体を保護するための措置として緊急やむを得ず身体拘束を

行わなければならない場合は、以下の手順に従って実施します。

1) カンファレンスの実施

① 緊急やむを得ない状況になった場合、身体拘束廃止委員会を中心として、各関係部署 の代表が集まり、拘束による利用者の心身の損害や拘束をしない場合のリスクについて検討し、身体拘束を行うことを選択する前に①切迫性②非代替性③一時性の3 要素 のすべてをみたしているかどうかについて検討、確認します。

② 要件を検討・確認した上で、身体拘束を行うことを選択した場合は、拘束の方法、場 所、時間帯、期間等について検討し本人・家族に対する説明書を作成する。

③ 廃止に向けた取り組み改善の検討会を早急に行い実施に努めます。

2) 利用者本人や家族に対しての説明

① 身体拘束の内容・目的・理由・拘束時間又は時間帯・期間・場所・改善に向けた 取組み方法を詳細に説明し、十分な理解が得られるように努めます。

② 身体拘束の同意期限を越え、なお拘束を必要とする場合については、事前に契約者・ 家族等と行っている内容と方向性、利用者の状態などを確認説明し、同意を得た上 で実施します。

3) 記録と再検討

法律上、身体拘束に関する記録は義務付けられており、専用の様式を用いてその様子・ 心

身の状況・やむを得なかった理由などを記録します。身体拘束の早期解除に向けて、 拘束

の必要性や方法を検討する。その記録は 2 年間保存、行政担当の指導監査が行われる際に

提示できるようにします。

4) 拘束の解除

前記「3記録と再検討」の結果、身体拘束を継続する必要性がなくなった場合は、速やかに

身体拘束を解除します。その場合には、契約者・家族に報告します。

7. 身体拘束廃止・虐待防止のための教育・研修

介護に携わるすべての職員に対して、身体拘束廃止・虐待防止と人権を尊重したケアの励行を図

り、 職員教育を行う。

① 定期的な教育・研修(年2 回)の実施

② 新任者に対する身体拘束廃止・改善のための研修の実施

③ その他必要な教育・研修の実施

8. 指針の閲覧について

この指針は、いつでも自由に閲覧できるように、当法人のホームページに公表します。

2022年8月9日

特定非営利活動法人さわやか防府

理事長 池本安邦